要旨:伝統的なイスラム文様の作成法を詳しく図解する。
下図のようなイスラム文様を眺めているとつながり方が不思議で、正八角形や8回回転対称の形とちょっと変形した五角の星がどのようにしたら、一緒にデザインできるのかと不思議でたまりません。
図0:伝統的なイスラム文様の一例
伝統的なイスラム文様の一例
この文様の伝統的な作り方を以下の通り図示します。
図1:作成法1
まず、正方形に対角線2本と内接円を描きます。
図2:作成法2
円に内接する正方形を2方向に描き、16分割線(赤破線)を描きます。
図3:作成法3
円に内接する正八角形を描き、さらに外側の正方形と16分割線の交点を中心とし、外側の正方形と上下左右の分割線の交点を通る円を描きます。
図4:作成法4
小さな円と16分割線の交点を通る水平・垂直・45度の線を正八角形と交わるまで描きます。また、正八角形の上下左右の頂点から外側の正方形の交点を通る延長線を描きます。
図5:作成法5
繰り返しのユニットを赤線の通り作成する。このユニット4つを規則正しく配置したものが、図0の文様になります。
解説
この例は正方格子に基づく基本的なものですが、できた結果も見栄えが良く、面白い形が出てくるので、一例として取り上げました。この例を元に伝統的な作成法の大きな考え方を説明します。まず、図1にあるように正方形に対角線2本と内接円を描くことを基本グリッドとして文様の元になる正八角形を描く準備をしているわけです。
次に図2、図3では基本グリッドを16分割線や小さな円により、さらに小さなサブグリッドとして分割しています。そして、図4、図5で繰り返しのユニットになる線をサブグリッドから抽出しています。さらに、このユニットを作る時に縁取りの重なりを上手く付けていけば、神の無限性を象徴する循環線を示すことができます。従って、この方法はコンパスと定規しかなかった時代にマッチし、そして、イスラム文様の特徴である縁取りと優美な形状を美しく表現できる素晴らしい作成法と言えるでしょう。
考察
上の例は比較的に理解しやすいものですが、コンパスと定規しかなかった時代に工夫と創意を凝らして幾多の職人たちが神のために精魂を傾けて作成した天上の図形であることに間違いありません。そう考えると、同じ方式で伝統文様を越えようとすることは難しいことが予想されます。私もある程度の長い時間に渡り、努力してみたものの文献等で見つけられるもの以上のものを見つけることはできませんでした。
参考文献
1 ダウド・サットン2011「イスラム芸術の幾何学」創元社
2 Eric Broug 2014“Draw Islamic Geometric Star Patterns” Kindle DP