解説
最初にコラボ作成した思い出深い作品です。
中央の天の川を中心に渦巻銀河、ブラックホール、超新星爆発、白色矮星、赤色巨星、恒星、木星状惑星、生命の星等、いろいろな天体を配置しています。どれが、その天体かは想像をたくましくして下さい。
なお、中央の構造は大きさの違う正方形を下図左図の様に無限に配列できるものですが、3、6、12、24、48cmの5段階の大きさで中央に右図のような十字星をおいたものです。
次に筆者の1997年に出版した本に、このキルトの紹介記事に作成の経緯やコラボ作成していただいた方のコメントがあるので、それを併せて見て下さい。
<<キルトに挑戦!!>>
男性の方は、ご存じないと思うが、手芸の1つにパッチワーク&キルトというものがある。これが思ったよりも幾何学的なものであり、今まで描いてきた図案を使って デザインができるのではないかと考えた。どうしようかと困ってしまったが、まずはキルト関連の雑誌を読んで研究してみた。そして、パソコン通信の大手であるNIFTY-Serve の「手芸とファッションのフォーラム」(FCREATE 4番会議室キルトの部屋)にお手伝いをお願いし、「さんすう キルト」プロジェクトと銘打ち、平成8年6月から4か月をかけて作成していただいた。 キルト作成までの経過を表8-2 に挙げておく。
表:キルト作成までの経過 (平成8年)
時期 | 活動内容 |
5月連休後 | 「Mathematicaで絵を描こう」の応用を企画する |
6月初め | コットンペーパーでキルトの試作等を行い、キルトを研究 |
6月15日 | FCREATEに「キルト作成の募集」を掲載 |
6月18日 | 「共同作成の逆提案==>「共同作成なら参加」の反響大 |
6月20日 | キルトのデザイン2つをホームページとFCREATE のライブラリーに掲載 |
6月26日 | 「共同作成についての暫定募集(集まらなければ止めるという意味) |
6月30日 | 一応人数が集まり、企画としてスタートすることになる |
7月下旬 | ホームページへのデザインのアップとメールによる協議でどうにかデザインが決まる。合わせてパターンごとに分担を決める |
8月18日 | 生地見本により、色番号を最終的に決める |
8月20日 | 型紙を作成し、発送 |
8月26日 | 大阪の買い出しチームが生地購入、裁断も実施 |
9月1日 | 生地発送 |
9月中旬 | 担当部分の完成の報がどんどん届く |
10月1日 | 関東オフラインミーティング(青山、ウイメンズプラザにて、全体の3/4が集まる) |
10月7日 | 関西オフラインミーティング(大阪、ドーンセンター)にて、全体のつなぎが、ほぼ完成 |
10月中旬 | もち回りでサイド等を取り付け |
10月30日 | 完成 |
さて、6月20日に当初案として見ていただいた2つのデザインを下に挙げておく。今になって見直してみると布で作ることをまったく考えずに図案を作成したことを痛感させられる。最終的な案で一番小さな部分は、真ん中の黄色い星で大きさ2.5cmであるが、これができることを確認して(本当は最低4cm ということであったが、無理やりお願いしてしまった)キルト全体の大きさを決定したわけであったが、当初案の2つには1cm以下の部分がたくさんあり、とても作成できるものではなかった。
2つのキルト当初案
それらを7月中下旬を通じて、ホームページとメールで調整し、どうにか実行可能なものとすることができました。
そして、Mathematicaで作成した図をドロー系のソフトに取り込み、A3判の用紙2枚を貼り合わせて、1つの型になるように出力しました。
デザイン作成の次に難しかった点は、色決めです。アートディレクター菊地氏にお願いして色決めを行ったのですが、自分のもっているイメージの色が、どの生地の色に一番近いかは 別のものであり、最終的には生地見本を送ってもらい生地見本の番号で指定することとなりました。 まして、ディスプレイ上の色などまったく異なるものと考えた方がいいようです。
ところで、キルトにはフレンドシップキルトという伝統があり、みんなで作った部分を集めて1 つのキルトとすることが普通に行われており、今回も16分割し、それをもち寄りつなぐことになります。 次の2枚の写真は、つなぐための集まり(パソコン通信では、オフラインミーティングにあたる)です。最初の写真は、10月1日に青山、ウイメンズプラザで行われた関東オフで、全体の3/4が集まりつなげられた様子です。次の写真はその後、10月7日に大阪、ドーンセンター で行われた関西オフの様子です。ここで全体がつなげられ外側の帯を除き、ほぼ完成したわけ です。
なお、キルトはキルティング(糸で細かいししゅうを入れること)をしなければ、本当に完成しないということで、平成9年1月から半年間、もち回りでキルティングしていただき、さらにすばらしいキルトになったことを付け加えておきます。
また、生地関連の費用は、合計3万円弱といったところでした。
関東オフ(平成8年 10月1日 青山、ウイメンズプラザ)
関西オフ(平成8年10月7日 大阪、ドーンセンター)
最後に立派なキルトを作成いただいた、きっこさん(FCREATE でのハンドル名)以下 20名の方に感謝します。写真で示した大きな部分を縫っていただいた16名の方から苦労した点と今回の企画についての感想をいただき、下にまとめているので見ていただきたい。
作成者コメント:作成パート毎に作成者のコメントを表示
ハンドル名:なみさん
苦労した点
実際に縫ってみたら縫い代が何枚にも重なる部分があり、左右でとても大きな違いが出てしまった。
今回の試みについての感想
こんな都会的な匂いのする企画に地方在住のままに、参加できてうれしかった。 コンピュータならではのシャープなデザインと、そのとおりの色を布で再現できたことが面白かった。
ハンドル名:みゆき さん
苦労した点
一番簡単なパターンだったので担当した部分で苦労したってことは全然なかったが、あんな大きなサイズのピースをやるのは初めてだったので、フガフガが出てしまったところが今でも気になっている(^^;)
今回の試みについての感想
楽しませていただいた。次回というものがあったら、きっとまた参加すると思う。
ハンドル名:かつこ さん
苦労した点
五角形の花を取りまく五角形の輪がかわいいパターンであった。 パッチワークでは六角形をつなぐ古典的なパターンがあるが、五角形というのは、とても面白かった。隣り合う五角形の角をきちんと合わせるようにアップリケしていくのにちょっと苦労したが、簡単にできた割にインパクトのあるもので、かわいらしいパターンだったと思う。
今回の試みについての感想
この話があってから、何もない状況から皆でいろいろ意見を出し合い、ここまでたどり着けたことにとても深い感慨を覚える。1人ではなかなかできない大きな作品がみんなで集まれば、こうして短期間でできること、それに全国各地の参加者がパソコン通信を通じて1つの気持ちになれたこと本当に楽しかったし、嬉しいことだった。どれを取っても、今までにないキルト制作の試みに参加できたことが私にとって、すばらしい記念になった。
ハンドル名:TOMOKO さん
苦労した点
型紙を作るのがちょっとめんどうだったが、技術的にはそんなに難しいパターンではなかったので縫うのは楽しかった。 ピース数がたくさんあるので、やはり縫い縮みが出たが外回りの縫い代をかなり取っておいたので、よかった。
今回の試みについての感想
さんすうキルトに興味をもったメンバーが集まって、1枚のタペストリができ上がるって本当作っていて楽しいし、なんといってもあっという間に完成させることができるのがよかった。1人で作るのもまた違う楽しさがあるけど、時間のこと考えると、みんなで作るほうがいいかも。
ハンドル名:めぞぴあの さん
苦労した点
「ひまわり」のパターンと同じようにできるかと思ったが、なかなか難しくて、一度手もちの生地で試作したが、縫い代の重なりも少なく、曲線もなかったので、楽しく作れた。
今回の試みについての感想
パソコン通信を通して、まだ会ったこともない人たちでこんな大きなものが作れるなんて、そして、それに参加できたなんて感激した。
ハンドル名:玲子 さん
苦労した点
黄色い星の先端の鋭さをどのくらい表せるかが、課題だと思った。 ブルーグレーの部分(一番外側の部分)を6分割したことで、なかなかよく表現は、できたのではないかと自分では思っている。
今回の試みについての感想
共同作品ということで、全国の皆と1つの作品を作れたこととてもよい経験となった。
ハンドル名:ひよこ さん
苦労した点
実は、布をつなぐ時点まで、六角形だと思い込んでいた。で、1枚ピースが足りないな、確かに6枚切ったのにと、探してしまったおおぼけものである(0) パッチワークの常識では、七角形なんてありえないもの、後で、自分で大笑いであった。
今回の試みについての感想
大変楽しくできた。私のパターンは、簡単だったのでよかったのかな。中村さんも何度もこちらの要望を取り入れて図案を書き直していただき、本当にありがとう。
ハンドル名:NARU さん
苦労した点
曲線の縫い合わせは嫌いではなく、また、1枚のパターンが大きいので、作業は簡単にできた。
今回の試みについての感想
自分がまだ、パソコンを使いこなしているとはとうてい、いいがたいので機械でいろいろなことをしてみたいが、これまた、いつになるや・・・。
ハンドル名:GUCKY さん
苦労した点
このパターンは円と四角が交互になっていてちょうど中心に向かって(外へ向かってかな?)いくような感じで、最初はピースにして縫おうと考えたが、ピースにするときれいな円が出ないかもしれないのでやめて、モラ風にした。縦まつりはめんどうだったが、1つずつでき上がるたびになぜかわくわくした。
今回の試みについての感想
パソコンで描いた図をこのような形にして残す。こういう試みがまたあるのなら参加したい、とても楽しかったし、勉強になった。
ハンドル名:上天気 さん
苦労した点
すべてが曲線でピース数も多く、見るからに困難なパターンで、実際に縫ってみるとやはり大変で、縫い縮みゆがみがひどく、それをごまかすのが大変だった。 キルティングは「落としキルト」という全体の約束があるにもかかわらず、ゆがみの矯正のため、「押さえキルト」にせざるを得なかった。また、縫い代が重なる部分(特に黄色い円の外側上下)はきれいに整えることができず、最も困難なところだった。
今回の試みについての感想
パソコンソフトでデザインしたパターンということで、パッチワークの世界では普段は見ないようなパターンが多く、興味深く、楽しく参加させていただいた。縫うのはけっこう大変だったが、せっかくパソコンでデザインするのだから、やはりありきたりのデザインでは面白くない。パソコン通信をしていたおかげで、他のキルターでは経験できない貴重な経験をさせていただいた。
ハンドル名:KEI さん
苦労した点
最初はまず、どんなふうに分割して、縫っていけばいいか、かなり悩んだが、ログキャビン方式でいこうと決めてからは案外簡単につないでいけた。
今回の試みについての感想
実際、パッチワークそのものが幾何学模様のようなものなのでパッチワーク用ソフトもあるが、英語版しかまだ手に入らないため、製図ソフトを使ってパターンの製図をしている人 もいるのが現状である。その点でいろいろな可能性を見ることができ、楽しい試みだったと思う。
ハンドル名:ユカマン さん
苦労した点
ピーシングの1つの手法である「はめ込み式」で縫った。しかし、はめ込み部分が曲がったのでかなり苦労してした(^^; 背景布にアップリケで縫い付けたが、これまた角が鋭角で非常に苦労した。 近くで見るとアラがバレる。
今回の試みについての感想
キルトの世界とは別の方のデザインだけに、すごく斬新で面白かった。今後、自分でオリジナル作品を製作していくためのいい勉強になった。そして、何よりもパソコン通信で1つの大作を仕上げたということに、ものすごい感動を覚えた。
ハンドル名:SEIKOさん、みつばちさん、ひろさん、かっこどりさん(4名で担当)
苦労した点
赤、緑、水色、青の星は、4人で相談して分割線の入れ方などすんなり決まったが、黄色の星は、25 ミリという小ささで、普通の縫い合わせ方法のピーシングが、無理で、いろいろと、試作品を作り、分割リバースアップリケ方法を、あみ出した (?)。 細かい作業で大変だった。また、キルトではカットした布の1枚1枚の大きさがだいたい同じくらいで縫いやすいが、このパターンの場合、星の大きさに差があり、その点で少しテクニックを要した
ハンドル名:SEIKO 今回の試みについての感想
最新技術のコンピュータと伝統あるキルトが結び付いてすてきな作品ができたと思う。パソコンもいろいろなことに使えるのだなと、それぞれの奥の深さを感じた。 後は、パソコン通信の威力も。
ハンドル名:ひろ 今回の試みについての感想
パソコン通信でつながった日本のあちこちに住む人が、ボードで話し合い相談しながら、よくここまでできたものだと感激ひとしおである。この試みのために何回かオフをしたことで、仲間の皆と会うことができ親しくなれたことも、大きな収穫であった。
ハンドル名:みつばち 今回の試みについての感想
数学は苦手だったが、なぜか、幾何は興味があった。 コンピュータという無機質なもので、描いた図案をキルトにする試みにひかれた
ハンドル名:かっこどり 今回の試みについての感想
パソコン通信を始めて数か月で、こんな企画に参加でき、とても貴重な経験だった。約185センチ角のキルトが、こんなに短期間で仕上げられたのは、参加者の協力が大変よかったからと思う。私は世話役を引き受け、皆の連絡係および、取りまとめをしたので、そのことをとても強く感じた。パソコン通信の仲間だから、なかなか顔を会わせることができない私たちが、ボードで連絡を取り合い楽しく取り組めた。
以上、銀河のキルトについて解説と製作の経緯等についてでした。
参考文献
「Mathematicaで絵を描こう」中村健蔵1997年 東京電機大学出版局